≪星の国から風だより≫  第五回 2009年2月28日

 

今日は第三回でお伝えした、乳がんを患った友人Tさんの講演会についてご報告します。『女性のためのライフスキル講座②乳がんと生きるー母として・妻として・私として』は、去る1月29日に日本人会館で開催されました。申し込み開始から間もなく参加希望者が定員に達し、子連れも可としたことから、女性29名、子ども6名の会員が集いました。

 

講座の前半はスライドをもとにTさんの乳がん治療体験を聴きました。私は逐次通訳を担当しました。一昨年前にシンガポールに引越しして間もなく受けた検診で進行乳がんが発見され、その後短期間で様々な決断を迫られたTさん。ご主人と相談しながら病を克服するため渡米し、患部の右乳房を切除しました。がんが進行していたため、術後も徹底した化学療法と放射線治療が行われました。ご主人は当時長期出張が多く、Tさんは化学療法を受けた後も吐き気をこらえながら車を運転して自宅に戻っていたそうです。二人の子どもの世話(幼稚園年少と小学4年生)をしながら、子どもの前では気丈にふるまっていた彼女ですが、子どもから、「ママは死んじゃうの?」、「わたしも同じ病気にかかるの?」といった現実的な質問をされて答えに窮したこともあったとのこと。あるときは化学療法による脱毛で頭髪がなくなった彼女に、4歳の息子が「ママに僕の帽子を貸してあげるよ」と言ってくれて感動したとか。Tさんのそうした話を聴いて思わず涙する参加者も見られました。

 

スライドによる発表は診断の経過、術後の治療、子どもとの対話、精神面での負担、支えてくれた人々などの説明の後、最後に他の女性たちへのメッセージで終わりました。そのメッセージとは、「マンモグラフィー(乳房X線検査)を定期的に受けること」、「いつも夫と子どもを優先するのではなく、自分のセルフケアもすること」、「大病をするまで待たずに今、自己実現をしよう」といったものでした。プレゼンテーション終了後はご主人が夫の立場でどのように妻の闘病を支えたのか、治療の費用や主治医を選ぶコツなどについてオープンに話され、内容の濃い講座となりました。

 

講座の後半は私が所属する医療従事者の会から、女性医師により乳がんの基礎知識、看護師による自分自身の乳がん治療体験、そして私からは精神面でのセルフケアについて発表しました。
逐次通訳を介しての講演でしたが、参加者からは、体験者の話を直接聞けてよかった、ご夫婦の関係が素晴らしい、検診の大切さがわかった、自分を大切にすることが大事だと気づいた、などのコメントをいただきました。

 

乳がんという大病を患ったTさんですが、今は生きる喜びを日々感じながら充実した毎日を送っています。「朝目が覚めて子どもの顔を見られたらその日は最高の日。」と語る彼女にあらためて幸せの意味を教えられたような気がしました。

 

5.ママ友の闘病体験関連ページ

星の国から風だより
シンガポールという国、皆さんはどのくらいご存知でしょうか。
2.出稼ぎ労働とメンタルヘルス
シンガポールには出稼ぎ労働者が多く住んでいます。人口459万人のうち約100万人が海外から働きに来ている外国人ですが(かくいう私の夫もその一人)、今回はある外国人労働者に起こった悲劇についてお話します。
3.闘病からの気づき
アメリカに端を発した世界金融危機の波はここシンガポールにも押し寄せ、バブル景気に沸いていた市場は一気に冷えこみ始めました。年々上がる一方だった住宅価格も下がり始め、好景気を見込んで高級コンドミニアムを購入した人々は多額の負債を抱え込んだようです。 昨年この国がバブルに浮かれているとき、私は一人の女性に出会い、改めて人生の価値は財産ではないことに気づかされました。今回はその女性についてお話します。
4.暑いお正月に感謝
日本では寒い毎日のようですが、当地シンガポールは朝晩「涼しいなー」という感じの冬です。日中は30度近くありますが、プールに入ると水は冷たく、子どもたちは震えながらスイミングをしています。日の出と日の入りは年中7時ごろですが、冬は日の出も多少遅くなるようで、子どもがスクールバスに乗る朝7時でもまだ暗く、月が出ています。
6.ホストマザーに学んだ人生
今回は3月に訪れたアメリカで感じたことをご報告します。
7.マイケル・ジャクソンを悼む
マイケル・ジャクソンの訃報が世界を駆け巡りました。史上最も成功したエンターテイナーとしてギネスブックに認定されたほどの功績を残したマイケルですが、その私生活は訴訟、ゴシップ、離婚、処方薬依存と波瀾に富んでいました。
8.グリーフワーク講座
シンガポール日本人会厚生部主催でグリーフワークの講座をおこないました。
9.私流アンチエイジング
エイジング(加齢)について真面目に考え始めました。きっかけは先般のグリーフ講座で資料として使った竹内まりやさんの「人生の扉」という歌です。
10.「小さな家」から学んだ大きな幸福
昨年から私の心を捉えているある子ども文学についてお話します。